(コラム)7月6日は甲鱗様の日!ところで甲鱗様って何?
マジックでは右下にパワー/タフネスという表記でクリーチャーの戦闘力を示す表記が書かれています。なので一部の人気のあるクリーチャーや特徴的なサイズを持つクリーチャーは、パワーとタフネスにちなんだ記念日を与えられることも。
さて7月6日と言えば「甲鱗様の日」でした、マジックをやっている方なら色々なところで甲鱗様を讃えるプレインズウォーカーの姿を見かけた事でしょう。(過去形なのはこれを思いついて書いているのがもう7月6日の終わり際だからです)
とは言え10年以上マジックを続けておられるベテランの方々なら甲鱗様の偉大さを知らぬ者はそういませんが、MTGアリーナでマジックを始めたくらいのプレイヤーは何がどうなっているのか分からないかも知れないと思い、このコラムを書くことにしました。。
マジックプレイヤーの間で語り継がれその偉大さを讃えられる「甲鱗様」とは、アイスエイジで初登場したこのカードの事を指します。
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マジックの長い歴史でも昔の昔、1995年に初登場してから同じイラストで基本セット第5版と第6版にも再録され、とてつもない人気を誇るカードです。画像投稿サイトのPixivでも下手なキャラクターより描かれていて、思いついた限りのプレインズウォーカーや背景世界の人物で調べたところ《甲鱗のワーム》よりイラスト数が多かったのはチャンドラだけでした。
いったい何がプレイヤーをそこまで引き付けるのでしょうか?
その強さを魅力に迫ってみましょう。
《甲鱗のワーム》の強さとその伝説
・圧巻のパワー7、僅か三回のアタックで相手は死ぬ。
パワー2なら10回、パワー3の《弧光のフェニックス》でも7回殴らないと相手を倒せません。しかしこのクリーチャーなら僅か3ターンという恐ろしく早いスピードでライフ20点削り取ってくれます。
・ちょっとやそっとでは倒せない除去耐性
6と言う高いタフネスのおかげで下手な火力どころか、《四肢切断》、最近のカードだと《火による戦い》まで耐えてしまう!さらにモダンやレガシーで人気の《致命的なひと押し》も平気で耐えてしまう!
・プレイヤーを威圧するイラストとフレーバーテキスト
― 「キイェルドー:氷の文明」
頭部をアップに描いた威厳に溢れるイラストと、その恐ろしさを描いた美しいフレーバーテキストは、一目見たプレイヤーにマジックの背景世界の厳しさ、そして《甲鱗のワーム》の強大さを刻み付けてきました。
・これだけの強さでシングルシンボル
代替の強いカードは色マナ2つ以上を要求しますが、《甲鱗のワーム》はシングルシンボルなのでどんなデッキにもタッチして使うことが出来ます!
MTG Wikiによると、あのレガシー環境で青単のデッキにわざわざタッチされて大会準優勝に貢献したことも。
・このカードのために《極楽鳥》を手放すプレイヤーが続出
余りの強さに、有名なマナクリーチャーの《極楽鳥》が《甲鱗のワーム》とトレードされていたという逸話も残っています。
実際は・・・
さて、ここまで読んでいて「いやいや何を言ってるんだ、そんなに強くないだろこんなカード」と思ったあなた。
それで良いです。それが普通の反応だと思います。
除去耐性が高いと言ってもタフネスとコストのみ、黒なら《喪心》であっさり落ちます。
《平和な心》みたいなカードを貼られても止まります。
クリーチャーが並ぶデッキ相手なら殴ってもチャンプブロックで時間を稼ぎながら殴り返されてしまいます。
そもそもどちらかがアグロなら8マナも土地が並ぶ前に勝負がついています。
これだけ重いと唱える前に《思考消去》のような手札破壊で落とされるかもしれませんね。
そもそもこの重さなら《グリセルブランド》とかカードアドバンテージで得するものを使うはず。
もっと強くて使いやすいカードはいくらでもあります。
(歴代最強かもしれない7/6の緑クリーチャー。土地6枚ならダブルシンボルも余裕でしょう。)
極楽鳥についても、実際は「カードの強さが分からない初心者を騙してレアカード(この場合は極楽鳥)を交換させる」シャークトレードという行為の具体例として使われているだけです。
どうしてこうなったのか管理人も(当時を知らないため)把握していませんが、甲鱗様こと《甲鱗のワーム》はいつの間にか定番の「弱いカードの代表」として扱われたり、デカいクリーチャーの代表格としてコスト踏み倒しデッキを説明する時の例に使われたりしました。
このカードをとにかく褒めちぎるのがどういうわけか定番のネタ、ジョークとして広まり愛されてしまっているのです。
ちなみに海外では
「甲鱗様」というネタは日本だけのものですが、英語圏では同じようになぜか強さを讃えるのが二次創作などで定番ネタになっている人気カードがあります。
それが《嵐雲のカラス/Storm Crow》
試しに公式のオラクルを確認できるGathererで、このカードを調べてから言語を英語にしてみましょう。
他のカードならコメントや評価なんて書かれることが無いのに、このカードを絶賛する大量のディスカッションを拝むことが出来ます。
一部翻訳するとこんな感じで。
「このカードはぶっ壊れすぎてカジュアルで禁止されている>。」
「こいつは今のスタンダードでも充分強い、飛行さえあれば・・・(テキストを読み直して)ああ、神よ」
「このカードは俺の童貞を奪っちまった。」
「《Black Lotus》より明らかに強い。」
「《嵐雲のカラス》で出来る事:
1枚で23ターン目に勝てる。分かってる、狂ってるかもしれないが、追加ターンと組み合わせてみろ。壊れてる。
《意志の力》でピッチ出来る。そんなカードがどれだけあると思ってる?
《ファイレクシアの抹消者》、《大祖始》、《無限に廻るもの、ウラモグ》を飛び越えられる。だから23ターンクロックは止められない。ゾッとするだろう。
いつでも1/1の兵士を殺せる。こいつとこいつと、そいつを・・・
《ダークスティールの板金鎧》で破壊不能に出来る。だから統率者では禁止なんだ。
《ファイレクシア化》で感染を付けて10ターンで勝てる。なんてこった。
剣でプロテクション《黒》を付ければ《破滅の刃》で死ななくなるし、プロテクション(赤)を付けたら《稲妻》で死なないんだ!」
「友達と一緒にマジックをしてて勝てそうだったんだけど、友達が《嵐雲のカラス》をプレイしたら僕は投了してカードをテーブルに叩きつけた、それから彼とは口をきいてないよ。」
「《嵐雲のカラス》はロケットランチャー(《Rocket Launcher》)を顔面に食らって・・・生き残るんだ。」
さらに通常の公式イベントで使えないネタカードを世に放つ特殊セットの『アンステーブル』では、このネタを基にした《カラスの嵐雲/Crow Storm》までも登場。
まさに日本でいう「甲鱗様」のような位置づけとされています。公式に。
マジックは歴史が20年以上と長いゲームなので、それだけ色々な遊び方やネタもたくさん派生してきました。
こうしてネタに走ったり、コスプレをしたり、ファンアートを描いたり、カードを加工して拡張アートや立体カードを作ったり、ゲームで勝負するだけじゃない色々な楽しみ方にも少しずつ触れてみるとさらに楽しいですよ!
管理人からはここまで。
まともなプレイは『新たなるファイレクシア』~『イニストラード』あたりからの管理人では、とても甲鱗様の有難みを語り尽くすことは出来ません。こうして自分以降のプレイヤーに大まかなあらすじを説明するのがやっとです。
さらなる甲鱗伝説をご存知の方がいたら、コメントで補足していただけると(見た人が笑えて)助かります!