(考察)戦慄衆はなぜあんなに弱いのか?
2019/05/30
(※注意:この記事はただ背景ストーリーのフレーバーについてだらだら語るだけの内容です。)
(5/30追記:小説の内容を踏まえた回答を追加しました。)
お久しぶりです。ここ最近ちょっと競技マジックから離れ気味になっていてこちらのブログを更新していませんでしたが、気分を変えてたまにはストーリー的な事でも語ってみましょうか。
さて、『灯争大戦』の基本的なあらすじはこうです。
ギルドが覇権を争いながらも共存する都市の次元ラヴニカに、突如アモンケットという別の次元との巨大な出入口が出現。その向こうから、ニコル・ボーラスが準備していた「永遠衆」または「戦慄衆」と呼ばれる大量のゾンビがぞろぞろ現れて人々を襲い始める。
この強大な敵に対してラヴニカの全10個のギルドと各次元から引き寄せられたプレインズウォーカーが協力して立ち向かう。詳細なストーリーは公式の小説(記事を書いてる時点で英語のみ)か、公式サイトのMagic Storyを確認しよう。
ふと違和感を感じたのは、この戦慄衆でした。
戦慄衆(永遠衆)は、アモンケットに用意された5つの試練を突破した優れた戦士の死体で構成されています。アモンケットにすむ全ての人々は最終的に5つの試練を達成するために日々自分の肉体と精神を鍛え上げるように仕組まれていて、その中でも特に優れた戦士たちだけが試練を突破して「蓋世の英雄」・・・という表向きの名前でゾンビにされています。
しかし、実際にこれら戦慄衆が登場した時・・・思ったより強くないとか、まるで雑兵のような扱いになってるように見えたのです。上のカードを見ると、最小で1/1という扱いになっているわけです。
そしてストーリーやカードを見てみると、ほぼ全員が戦闘訓練を受けるアモンケットの中で選び抜かれた戦士である戦慄衆は・・・
ギデオンやアジャニになぎ倒され、
ワームにあっさり呑み込まれ、
さらにプレインズウォーカーでなくともギルドの兵士くらいなら互角に戦うことが出来るみたいです。
選び抜かれた戦士のゾンビはそこまで強くないのか?だとしたらなぜこんなに弱いのか?多分ツイッターのどこかででそんな指摘を見てから、そう考えました。
そしてヒントとなる文章を思い出しました。
(中略)
経験や体を動かす技術が圧倒的に足りないのだ。
(「ニートだけどハロワにいったら異世界に連れてかれた」から引用)
異世界に転生し特殊能力で一流の剣術を手に入れた主人公ですが、師匠にあたる軍曹殿の本物の経験にはまるで敵わない。
マジックに例えてみましょう。
まず、誰でも良いので強くて有名なプロプレイヤーをイメージしてください。あなたは好きなようにカードを手に入れて強力なデッキを持っていますが、同じくらい強力なカードとデッキを持っているトッププロに勝てますか?例えばミラーマッチで・・・?
相手が事故を起こしたらうっかり勝てることもありますが、並みのプレイヤーは勝てる気がしないと思います。
これと似たような事が戦慄衆などのゾンビにも言えるのではないでしょうか?
アモンケットの試練で鍛え抜かれた身体能力、敵を殺すための強力な技を持っているゾンビは普通の人にとってはどうにもならない脅威です。
しかし多くの訓練や戦いを潜り抜けた戦士や兵士の持つ経験や判断力は完全に再現できない。相手の攻撃に反応したり、いつどこでどんな動きをするかを組み立てて判断する能力は、せいぜいゲームを始めたばかりの初心者や難易度の低いCPU程度のものしか持てない、それが死体であるゾンビの限界と思われます。
格闘ゲームやその他対戦ゲームをやっていると、レベルが違う相手同士が戦ったらもうなすすべもないくらい一方的にボッコボコにされるなんて日常茶飯事です。
それが一撃でもまともに剣で斬られたら死んでしまう現実の戦いなるとこの技量の差は決定的で、彼ら戦慄衆は簡単にバッタバッタ倒されていくように見えるのです。
では操る人が上手くやればと思うかもしれません。しかしリリアナが、いや、たとえボーラスでも、全てのゾンビが見たものを管理して1体1体ごとにギデオン並みの優れた武術を引き出すように、同時並行で操作する事が出来るでしょうか?
流石に無理でしょう。おそらく出来る事は「目の前のあいつらを殺せ」とか「プレインズウォーカーから灯を奪え」みたいな単純な命令くらいで、後は自動操縦に任せるしかないのです。
まとめると、戦慄衆というのは「鍛え抜かれた肉体と相手を殺すための強力な技を持っている」けれど「戦いの経験や判断力はほとんど無い」ゾンビの集団。
なので鍛え抜かれた技術や経験を持っている英雄や、巨大な体を持つ巨人やワームといった生物に太刀打ちする力は無く、総合的にはちょっと強い兵士くらいの強さしか無いのです。
というわけで、普段あまりやらないフレーバーからマジックを語る記事でした。
慣れないうちはカードやデッキを選ぶことも大事ですしそんな記事を翻訳したことも多いですが、知識や経験を積むことでしか手に入らないプレイングの技術はみんなが考えている以上に影響力を持っている、そんな事を改めて考えるようになりますね。
(追記)
注意:ここから下は『灯争大戦』小説版のネタバレになるため(公式サイトみたいにクリック一発で出し入れするやり方が分からないので)白い文字にして伏せておきます。スクロールしてください。
コメントを見て答えが出ました。(小説は読了済み)
《ボーラスの手中》に堕ちたリリアナは戦慄衆の指揮を任されていますが、一貫して迷いを感じながらゾンビ軍団を操作してます。実際に、「建物の中の人間は襲わない」という制限を付け、ボーラスに従っているふりを続けながらも本気を出さず永遠衆の力を抑えていた描写があります。
『破滅の刻』で(トークン出ないカードを除き)4/4の力を持っていた永遠衆がラヴニカで1/1単位の軍団トークンに弱体化したのは、終盤でボーラスを裏切る前から迷いを抱えていたリリアナの孤独な闘いを表しているのです。