「MTGのカードは高い」と嘆く君が目を背けるたった1つの現実
2018/05/07
マジックのカードは往々にしてとんでもなく高くなることがあります。かつては《精神を刻むもの、ジェイス》が競技シーンの上位を独占して10,000円台にまで跳ね上がってしまった挙句スタンダードで禁止に。ちょうどFNMに出始めたころに起こったのですごく衝撃でした。
そして今、あるカードが高騰している事が話題になり物議をかもしています。
それが《ウルザの後継、カーン》。
どうやらこれが「5,000円以上まで伸びたことで高すぎる、ショップは値段下げてくれ」という感じの声がTwitterで上がって、それをきっかけに色々なコメントが巻き起こっているいるようなのです。
需要があるから仕方ない、初動で買っておけばよかった、今回のカーンはそれぐらいの強さと価値がある、値段が上がれば逆に買取で得する人もいる、それでもカード1枚に5,000円以上は高すぎる、カードの値段でデッキ選択が歪められるのはゲームとして不健全・・・などなど。
どの意見も正しいと思います。
そして、それを見ながら自分がたどり着いたのは、「必要なカードなら買うしかない、それ以上でもそれ以下でもない」という我ながら何ともドライな結論でした。
まあそれだけだと寂しいので、そこに至るまでに考えてつぶやいた事をもとに、こういう話題で見落としがちなMTGの現実というか性質の話をしようと思います。
MTGはデッキが強ければ下手でも勝てるゲームである。
あえて少々語弊がある言い方にしていますが、MTG、いやトレーディングカードゲームの本質に関わります。
MTGに限らずカードゲームというのは単に上手ければ勝てるゲームではありません。グランプリなどの結果を見ていれば、必ずしもプロプレイヤーや殿堂入りプレイヤーが優勝しているとは限りませんよね。
なぜなら「カードゲームの強さ=プレイヤーの強さ」ではないからです。
正確には「カードゲームの強さ=デッキの強さ+プレイヤーの強さ+運」というのが実態です。
強いデッキ、相性が良いデッキを選べば、格上の相手でも勝つ可能性がある。他の要素が互角でも事故で勝敗がひっくり返る事がある。そういうゲームなのです。
それこそが、カードゲーム、それも挙動の幅が広いMTGだからこその魅力です。
管理人は元々格ゲーを中心に対人戦のゲームが好きでいろいろやっていたので身に染みています。
鉄拳7 - PS4 |
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例えば、格闘ゲームや将棋や囲碁のようなゲームをやるとしましょう。純粋にプレイヤーの強さだけが全てのゲームです。
もし未経験者だとしたら、たぶん本当に楽しめるようになるまでは死ぬほど努力が必要になります。
ここで言う楽しむというのは「大会で頂点を目指す」という意味ではありません。「ゲームの基本を理解し、仲間内や平均的なプレイヤーとワイワイ勝ったり負けたりする」レベルの話です。
それでも未経験から始めた場合は大抵の場合、全く勝てないレベルから負け続けて負け続けて負け続けて強くなってやっと人並みになれる、そういう流れになりがちです。
今はネット対戦のランクマッチがあるゲームなら少しはマシですが、それでもゲーム人口によっては素人からしたら桁違いのレベルの経験者しかいない場合もあります。
「勝てなくても楽しいだろう」という人もいるでしょうが、現実には負けが込むとやる気が無くなったり気が付いたら辞めていないでしょうか?
たまに技術面以外で「対戦を楽しむ」までのハードルが別の意味で高いゲームも見かけます。それがポケモン。
ポケットモンスター ウルトラサン - 3DS |
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説明すると長くなりますが、ポケモンでは対戦で使うパーティ(≒デッキ)用のポケモンを最低6種類は捕まえるか卵から孵して育てる必要があります。しかしここで曲者なのが、個体値と呼ばれる内部データの存在。
現実世界で全く同じ能力や才能や外見の人間がいないように、ポケモンにも個体差が存在します。具体的にはポケモンを1体入手するごとに内部データでHP・攻撃力などの各ステータスに0~31の数字が割り振られて、能力に補正がかかる仕組み。
なのでいくら自分が知識・理論・プレイングに秀でた上級者でも、「こういうパーティを構築したい」と思ったらこの内部データの数値が高い優秀なポケモンを入手するために何十時間も作業する事を強制されます。
お金の代わりに時間をかけるガチャと思っていただけば良いです。
しかし、カードゲームで「対戦を楽しむ」段階までたどり着くのはそう難しくありません。
トップメタにあるデッキをどれかコピーしたり、メタゲームに上手くはまるデッキを構築して、基本的な理論や定石を多少分かっていれば、極論すると細かいプレイは初心者でもそこそこ戦えるようになります。
練習してスキルを身に付ける必要も、時間をかける必要もそこまでありません。必要なカードを揃えてデッキを完成さえしたら、あなたも中級者、または「平均的なプレイヤー」の仲間入りです。
そこから上を狙うにはその先のプレイングが必要ですが、とりあえず楽しむ範囲でのスタートラインに立つ事は出来るわけです。
これこそがカードゲームと他の対戦ゲームとの最大の違いであり、カードゲームに金をかける理由はそこに集約されます。その結果として強いカードや需要が高いカードは値段が上がるので、これを止めるのは不可能でしょう。良い悪い関係なく受け入れるしかありません。
なので厳しい事を言えば、カードを買って得られるデッキの強さや個性に対して「お金を払いたくない」という感情が出てしまう場合は、根本的にTCGに向いていない可能性すら考えられます。
少しでも安くマジックを続けるために
カードは高い。それは変わりません。我々プレイヤーに出来る事は、少しでもお金をかけずにゲームを楽しめるように賢くお金を使う事のみです。そのための出来る限りのコツを書いておきます。
・必要なカードだけを買おう
あるカードが結果を残したとか、これは今買っておかないと上がるだろうとか、そういう理由でカードをつい買ってしまうことがあります。他には「高いカードが当たったら爆アド」とかいう感覚でついついパックを剥いてしまうこと、ありませんか?そうやって買ったカード、その後使っているでしょうか?
そうではなく、自分が組むデッキに本当に必要なカードだけをシングルで購入しましょう。いや、パックを剥くのは楽しいと思います。しかし「お金を節約する」という方針なら一番無駄が無いやり方です。
細かいところは昔の翻訳記事のリンクをつけておきます。
参考:【翻訳】乗っては「いけない」、このビッグウエーブに。賢いカードの買い方とは?
・環境を変えてみよう
スタンダードで競技レベルのデッキを組むのは高すぎる、どうしてもそう感じてしまうのは仕方ありません。ですから思い切って違うフォーマットに挑戦するのもアリだと思います。
現在管理人はモダンを中心、というより完全にモダンのみで活動しています。というのも、モダン向きのカードをかなり持っていてデッキを組みやすいのと、スタンダードで環境が変わるたびにカードを買い直す負担が厳しいからです。モダンは一応レガシーよりは安い値段でデッキが組めて、公式大会や店舗イベントもそこそこあります。モダン向けに買うカードは確かにスタンダードより高いですが、ローテーション落ちしない分何年経っても遊び続けられるので、結果として3年、4年、5年という目線ならスタンダードよりお得な買い物になるのです。
それでもカードを買うのが厳しいという場合はPauperをおススメします。Pauper(パウパー)は乱暴に言えば「歴代コモン限定の構築」です。現状Magic Onlineと一部大きなショップの非公式イベント、グランプリのサイドイベントくらいでしかお目にかかれないので対戦する機会は少ないかもしれません。しかしとにかく安いですし、じわじわとファンが増え続けています。
・自分が本当に得意なスタイルを見つけよう
有名な話ですと、プロプレイヤーのCraig Wescoe選手は様々なフォーマットでDeath&Taxesなど白系のアグロデッキを使って勝ち続けています。
それは、自分の性格や好みのスタイルにあった最大のパフォーマンスを発揮できるアーキタイプで、一つを極め続けることでその経験を他の環境に持ち越しているからです。
最初の「必要なカードだけを買おう」という所ともつながる話ですが、自分は赤単のようなバーン系アグロが得意なのか、管理人のように黒いミッドレンジが好きなのか、どっしり構えるコントロールが合ってるのか、それとも戦闘以外で勝つコンボデッキが好みなのか?本当に好きなスタイルを分かっているとかなり楽になります。
環境が変わったら、まず自分のスタイルに近いデッキを組んだり調整すれば、自然と気持ちよくプレイ出来て勝率も上がるデッキを構築しやすいですね。
最後に:それでもカードを買うしかない
カードを買えという話ですが、問答無用で札束デッキを組めとか、生活費を削ってでもトップレアを買えとかいう意味ではありません。
ただ、自分が好きな戦術や組みたいデッキの中で必要なカードがある場合、可能な限りそれを入れてデッキを完成させるべきなのです。
もしフライデーナイトマジックやお店のイベントに出るなら、他の参加者はみんな必要なレア・神話レアを買いそろえて完成されたデッキを持ち込んでくるからで、未完成なデッキで臨んでもボコボコにされて貴重な休みが終わってしまいます。最悪ですね。
カードを買うか迷っていて、その理由が値段だった場合は、買えるなら買いましょう。その後のMTG生活がずっと楽しくなります。確実に。
とりあえず今回はこんなところです。
皆さんが最高のデッキと共にあらん事を。