【翻訳】コントロールが抱える悩みとグリクシス・白黒コントロールの強さ
久々のスタンダードです。今の環境でコントロールが抱える課題、そこから今の形がなぜ導き出されたのか、他のコントロールと何が違うのかを解説。コントロール好きなら必見。
若干省略もしていますので原文もどうぞ。
The Rise of Grixis and White-Black Control by Jadine Klomparens
(翻訳開始)
プロツアー「イニストラードを覆う影」の後、スタンダードでは大きなイノベーションがありました・・・4色儀式とグリクシスコントロールです。グリクシスは、プロツアーでもOliver Tiuの手で8-2を記録しましたから、プロツアー後と言うのは間違っているのかもしれません。その素晴らしいパフォーマンスにもかかわらず、プロツアーの時点では足跡を残していないように見えました。それ以降、あらゆる場所で足跡を残しています。それどころか、グランプリのトップ8にも残るようになりました。
★サンプルレシピ グリクシスコントロール
(GPマンチェスター4位 Jonas Friberg)
土地 26枚
3 《進化する未開地/Evolving Wilds》
4 《凶兆の廃墟/Foreboding Ruins》
1 《島/Island》
2 《山/Mountain》
2 《シヴの浅瀬/Shivan Reef》
3 《燻る湿地/Smoldering Marsh》
3 《窪み渓谷/Sunken Hollow》
5 《沼/Swamp》
3 《さまよう噴気孔/Wandering Fumarole》
クリーチャー 12枚
1 《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》
4 《ゴブリンの闇住まい/Goblin Dark-Dwellers》
4 《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy》
3 《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet》
呪文 22枚
2 《炎呼び、チャンドラ/Chandra, Flamecaller》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス/Ob Nixilis Reignited》
2 《闇の誓願/Dark Petition》
3 《焦熱の衝動/Fiery Impulse》
4 《闇の掌握/Grasp of Darkness》
2 《コラガンの命令/Kolaghan's Command》
1 《衰滅/Languish》
2 《骨読み/Read the Bones》
3 《破滅の道/Ruinous Path》
2 《精神背信/Transgress the Mind》
サイドボード 15枚
2 《強迫/Duress》
2 《無限の抹消/Infinite Obliteration》
3 《否認/Negate》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス/Ob Nixilis Reignited》
2 《光輝の炎/Radiant Flames》
1 《シルムガルの命令/Silumgar's Command》
1 《終止符のスフィンクス/Sphinx of the Final Word》
2 《精神背信/Transgress the Mind》
1 《悪性の疫病/Virulent Plague》
このスタンダードでなぜグリクシスコントロールが活躍して、他のコントロールが上手く行ってないのでしょうか。白黒コントロールは活躍していますが、他のコントロールがそうでないのは?エスパーコントロールは、ローテーション後にエスパードラゴンの主力が無くならないと脚光を浴びましたが、この色の組み合わせは継続して結果を出せません。同様に、黒と緑を軸にした様々な戦術が登場しましたが、継続してプレイされていません。
コントロールデッキが長続きしないスタンダードで、グリクシスと白黒が飛び抜けています。この二つのコントロールデッキの共通している部分を解析することで、これらのデッキがなぜメタゲームのトップに食い込んでいるのか、またこの知識を活かしてスタンダードを探検する道しるべになるでしょう。
★サンプルレシピ グリクシスコントロール
(GP東京2位 鈴木和茂)
土地 26枚
3 《進化する未開地/Evolving Wilds》
4 《凶兆の廃墟/Foreboding Ruins》
1 《島/Island》
1 《山/Mountain》
3 《シヴの浅瀬/Shivan Reef》
4 《燻る湿地/Smoldering Marsh》
2 《窪み渓谷/Sunken Hollow》
5 《沼/Swamp》
3 《さまよう噴気孔/Wandering Fumarole》
生物 14枚
2 《龍王シルムガル/Dragonlord Silumgar》
4 《ゴブリンの闇住まい/Goblin Dark-Dwellers》
4 《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn's Prodigy》
4 《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet》
呪文 20枚
1 《炎呼び、チャンドラ/Chandra, Flamecaller》
3 《焦熱の衝動/Fiery Impulse》
2 《闇の掌握/Grasp of Darkness》
3 《コラガンの命令/Kolaghan's Command》
1 《光輝の炎/Radiant Flames》
3 《骨読み/Read the Bones》
3 《破滅の道/Ruinous Path》
2 《精神背信/Transgress the Mind》
2 《究極の価格/Ultimate Price》
サイドボード 15枚
2 《竜使いののけ者/Dragonmaster Outcast》
4 《強迫/Duress》
3 《熱病の幻視/Fevered Visions》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス/Ob Nixilis Reignited》
3 《光輝の炎/Radiant Flames》
1 《シルムガルの命令/Silumgar's Command》
1 《悪性の疫病/Virulent Plague》
★プレインズウォーカー除去が必須
白緑トークンがスタンダードを支配しています。そしてこのデッキの成功の中心はプレインズウォーカーの強さです。戦場は絶え間なくクリーチャーで溢れていくため、プレインズウォーカーを戦闘で倒すことが重要な要素です。今までこのようなフォーマットでは火力呪文でプレインズウォーカーを監視していましたが、今の火力はあまりにも弱すぎるのです。プリンズウォーカーを対象に取れる除去はとても貴重な存在で、グリクシスも白黒も大量に搭載しています。グリクシスは《破滅の道》を、白黒はさらに《苦渋の破棄》を搭載しています。ゲーム後半ではグリクシスコントロールはさらに《龍王シルムガル》をプレインズウォーカー対策としてアクセスしてきます。
プレインズウォーカーを殺す呪文がこのフォーマットで重要なのは理解できます。しかし、成功しているとは言えないコントロールデッキもそれを積んでいます。むしろ、ほとんど全てのコントロールデッキが《破滅の道》をプレイしています。ではグリクシスコントロールと白黒コントロールは何が違うのでしょう?これらのデッキはどれも3枚から5枚、プレインズウォーカーへの回答を搭載しています。これでゲーム序盤のうちは相手のプレインズウォーカーに対処できるでしょう。しかし《時を超えた探索》が無い今、ゲーム中盤から後半にかけてプレインズウォーカーに確実に回答出来ないのです。スタンダードではカードを選択するドローが強くないので、コントロールは緑白トークン出す2枚目のプレインズウォーカーへの回答を容易に探せません。そして現実を言いましょう:緑白トークンは2枚目のプレインズウォーカーを必ず持ってます(8枚積んでいるんですから)。グリクシスと白黒コントロールは、他のコントロールと違ってゲーム中盤から終盤でプレインズウォーカーに対処する能力があるのです。
白黒コントロールは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》、《死の宿敵、ソリン》、《荒野の確保》です。白黒は戦場が塞がっていても、《衰滅》とギデオンによる攻撃を組み合わせて相手のプレインズウォーカーを破壊できることを覚えておいてください。グリクシスは《ゴブリンの闇住まい》を4枚目から7枚目の《破滅の道》として使え、闇住まい自身も威迫の付いたブロックされにくい圧力になります。除去が1枚あれば、相手は実質クリーチャーが3体いないと闇住まいをブロックできません。
闇住まいで再利用できる余地があるということは、《破滅の道》を序盤でクリーチャーに「無駄使い」する選択肢もあるという事で、他のコントロールには出来ない贅沢ですね。グリクシスはさらに《龍王シルムガル》、さらにシルムガルと闇住まいを再利用しつつプレインズウォーカーの最後の2点を削り切ることもある《コラガンの命令》もあります。全部ひっくるめて、グリクシス相手にプレインズウォーカーを維持するのは本当に困難です。
エスパードラゴンが中盤に使う《龍王オジュタイ》と比べてみましょう。オジュタイは闇住まいと違い、プレインズウォーカーを倒すには既に戦場に出ていなければいけません。それは白黒が使うギデオンも同じです。ですが、白黒のギデオンやグリクシスの闇住まいが相手のプレインズウォーカーを破壊する時、それは本来のプランを遂行しているのです。つまり、相手のクリーチャーを破壊して道を開けて、さらに戦闘ステップを介してプレインズウォーカーをどけるのです。しかしオジュタイがプレインズウォーカーを殴れば、それは呪禁を持つブロッカーを失う上に、《予期》の誘発も失うのです。エスパー側が大きくリードしていればそれでも問題ありませんが、接戦であれば悲惨な状態です。
★サンプルデッキ 白黒コントロール
(GP優勝 Seth Manfield)
土地 25枚
1 《荒廃した湿原/Blighted Fen》
4 《コイロスの洞窟/Caves of Koilos》
4 《放棄された聖域/Forsaken Sanctuary》
3 《平地/Plains》
4 《乱脈な気孔/Shambling Vent》
6 《沼/Swamp》
3 《ウェストヴェイルの修道院/Westvale Abbey》
プレインズウォーカー 9枚
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar》
3 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス/Ob Nixilis Reignited》
2 《死の宿敵、ソリン/Sorin, Grim Nemesis》
呪文 26枚
3 《苦渋の破棄/Anguished Unmaking》
3 《闇の掌握/Grasp of Darkness》
2 《神聖なる月光/Hallowed Moonlight》
4 《衰滅/Languish》
1 《次元の激高/Planar Outburst》
4 《骨読み/Read the Bones》
2 《破滅の道/Ruinous Path》
3 《荒野の確保/Secure the Wastes》
2 《精神背信/Transgress the Mind》
2 《究極の価格/Ultimate Price》
サイドボード 15枚
1 《静寂を担うもの/Bearer of Silence》
2 《死の重み/Dead Weight》
3 《強迫/Duress》
1 《変位エルドラージ/Eldrazi Displacer》
1 《神聖なる月光/Hallowed Moonlight》
3 《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet》
1 《難題の予見者/Thought-Knot Seer》
2 《精神背信/Transgress the Mind》
1 《究極の価格/Ultimate Price》
★テンポゲーム
スタンダードに限って言えば、何もしないコントロールの時代は終わったのです。今はコントロールでさえも率先して何かをしなければならないのです。結果を出したコントロールで、この考え方を採用しなかったデッキはありません。どれも自分から攻めるプランを持っています。エスパードラゴンは《龍王オジュタイ》でコントロールを維持し、エスパーコントロールは大量のプレインズウォーカーを。そして黒緑季節コントロールでさえも、《闇の誓願》から《過ぎ去った季節》を使いまわし、カードアドバンテージの差で相手を葬るプランを持っています。
さらに現実は、能動的にゲームを掌握しに動くだけでもまだ足りないのです。グリクシスも白黒もさらに一歩先を進んでいて、即時にゲームに影響を与えることを重視しています。中でも特に重要なのはコントロール手段であると同時にゲームを終わらせる脅威であるカードです。白黒コントロールが使う《死の宿敵、ソリン》と《灯の再覚醒、オブ=ニクシリス》は出た瞬間に相手のパーマネントに回答し、そのまま戦場に残って脅威としてゲームを動かします。《ゴブリンの闇住まい》も同じです。パーマネントを除去し、脅威として残ります。脅威としては《龍王オジュタイ》よりも劣りますが、今は素早いインパクトの方が持久性よりも必要なのです。もちろんオジュタイのように、最初の闇住まいでグリクシスはゲームに勝てません。ですが長期的に見れば、闇住まいで素早く戦場を処理しつつ相手にリソースを割かせることで、グリクシスはゲームをコントロールできるようになるのです。
つまり、グリクシスと白黒は今のフォーマットのルール、「テンポが最重要」に従っているのです。次のターンまで戦場を変えないカードに4マナから5マナも使っていては勝てません。さらに、これらのデッキのカードは状況に左右されず、常にマナを立たせることを要求しません。どちらかと言えばタップアウトコントロールに近く、相手のデッキに対してテンポで勝負出来るのです。これらより成功の少ないコントロールは今の環境のルールに逆らい、中盤までひたすら回答を続けて、一切の相互作用無しで勝とうとするのです。問題は、受け身のコントロール戦術が構造的に失ったテンポを挽回するにはカードがあまりにも弱い事です。
このフォーマットで4マナと5マナの呪文は、解決したら即座に何かをしなければいけません。4マナ域の基準はすぐにクリーチャーを1体分の価値(クリーチャーを出すか除去するか)があり将来的に追加が期待できる事、5マナ域以上はクリーチャー2体分の価値が基準です。コントロールデッキはゲームを掌握する前にゲーム中盤のプレインズウォーカーを対処するプランをもっと考えなければ、貴重なプレインズウォーカーへの回答を強制されるでしょう。
これらを考慮すると、《ピア・ナラーとキアン・ナラー》はもっとプレイされて良いと思います。
(翻訳終了)
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