【翻訳】そのミッドレンジはなぜ弱いのか?
2018/02/23
最近話題が広がって来ているPauperをもとにした記事ですが、ミッドレンジやデッキ選択についての考察が印象に残ったので翻訳・紹介。ミッドレンジ好きならフォーマット関係なく読める内容だと思います。
(原文はこちら)
Why My Favorite Deck is Bad(gatheringmagic.com)
(翻訳)
僕との付き合いが長いなら、僕がどれだけ黒主体のミッドレンジが大好きか疑いようがないだろう。僕は間違いなく妨害能力を持ったクリーチャーを除去でバックアップしながらプレイするのが大好きだ。メタゲームで有利な位置にあると思い、先週のほとんどはそのデッキを使い続けてた。最初のリーグは成功だった・・・3-2で終わった・・・しかしそこから転がり落ちていった。
サンプルレシピ:ラクドスミッドレンジ
クリーチャー12
2:《墓所のネズミ/Crypt Rats》
3:《グルマグのアンコウ/Gurmag Angler》
3:《黒薔薇の棘/Thorn of the Black Rose》
4:《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》
呪文25
2:《終止/Terminate》
3:《稲妻/Lightning Bolt》
1:《頭の混乱/Addle》
1:《エヴィンカーの正義/Evincar's Justice》
1:《骨読み/Read the Bones》
2:《強迫/Duress》
2:《信仰無き物あさり/Faithless Looting》
2:《炎の斬りつけ/Flame Slash》
3:《チェイナーの布告/Chainer's Edict》
4:《夜の囁き/Night's Whisper》
1:《回帰の泉/Font of Return》
3:《清純のタリスマン/Pristine Talisman》
土地23
4:《山/Mountain》
8:《沼/Swamp》
1:《灰のやせ地/Ash Barrens》
1:《やせた原野/Barren Moor》
1:《ボジューカの沼/Bojuka Bog》
1:《忘れられた洞窟/Forgotten Cave》
3:《ラクドスの肉儀場/Rakdos Carnarium》
4:《血溜まりの洞窟/Bloodfell Caves》
サイドボード15
1:《頭の混乱/Addle》
1:《チェイナーの布告/Chainer's Edict》
1:《強迫/Duress》
1:《グリクシスの奴隷使い/Grixis Slavedriver》
1:《稲妻/Lightning Bolt》
2:《電謀/Electrickery》
2:《虚無の呪文爆弾/Nihil Spellbomb》
3:《ゴリラのシャーマン/Gorilla Shaman》
3:《紅蓮破/Pyroblast》
このデッキは、「《信仰無き物あさり》は独特で強力なカードだけど正しいデッキでしか機能しない」という考えから生まれたものだ。このソーサリーを活用するためには、余剰なカードにアクセスしなければならない。大量のカードがあれば《信仰無き物あさり》はゲーム終盤に力を増すのだ。Pauperで最も安定したカードの供給を維持する手段は統治者メカニズムだ。統治者は継続的なカードアドバンテージ源として様々なミッドレンジを支えている。黒には《黒薔薇の棘》があるが、現在流行している統治者カードの王様は《宮殿の歩哨》になっている。これは《宮殿の歩哨》が《稲妻》に耐性があり、《虹色の断片》で相手の攻撃を拒否出来るからだ。それでも僕は思いとどまらなかった。
当然、これが僕の最初の間違いだ。目の前で証明されているのだから、僕がこちらの方が強いと思っていても関係ない。僕がプレイしようとしていたデッキは、もっと有名で成功しているボロス統治者と同じ軸で機能する。だったらなぜ僕はボロス統治者をプレイして《信仰なき物あさり》が入るか試そうとしなかったのだろうか?今から振り返ってみると、理由が思い浮かばない。しかしその時には正当化する理由があった。
ボロス統治者
(Mathonical、2月4日 Pauper Challengeトップ8)
クリーチャー17
2:《宮殿の歩哨/Palace Sentinels》
3:《道の探求者/Seeker of the Way》
4:《きらめく鷹/Glint Hawk》
4:《コーの空漁師/Kor Skyfisher》
4:《スレイベンの検査官/Thraben Inspector》
呪文22
3:《焼尽の猛火/Searing Blaze》
4:《感電破/Galvanic Blast》
4:《稲妻/Lightning Bolt》
1:《炎の稲妻/Firebolt》
1:《忘却の輪/Oblivion Ring》
2:《未達への旅/Journey to Nowhere》
3:《錬金術師の薬瓶/Alchemist's Vial》
4:《予言のプリズム/Prophetic Prism》
土地21
2:《山/Mountain》
2:《平地/Plains》
1:《忘れられた洞窟/Forgotten Cave》
1:《光輝の泉/Radiant Fountain》
2:《ボロスの駐屯地/Boros Garrison》
2:《隔離されたステップ/Secluded Steppe》
4:《風に削られた岩山/Wind-Scarred Crag》
3:《古えの居住地/Ancient Den》
4:《大焼炉/Great Furnace》
サイドボード15
2:《電謀/Electrickery》
2:《ゴリラのシャーマン/Gorilla Shaman》
2:《コーの奉納者/Kor Sanctifiers》
3:《溶鉄の雨/Molten Rain》
2:《虹色の断片/Prismatic Strands》
2:《紅蓮破/Pyroblast》
2:《軍旗の旗手/Standard Bearer》
僕は《コーの空漁師》が下り坂に入っていると感じたのだ。テンポを損ねる形でデッキを歪めなければならない上に、《コーの空漁師》パッケージをプレイする事で他の入れられるカードの枠を喰っていると思っていた。そこまでなら正しかったかもしれないが、僕がやったのはスロットを喰う別のパッケージでデッキを埋めるという事だ。リストにある主要なドロー呪文はどれもライフの支払いを要求し、ダメージを軽減するために《清純のタリスマン》が入っている。タリスマン自体は悪いカードではないが、単体では3マナ支払って何もしないのだ。これはミッドレンジが欲しいカードではない。
ここで黒のミッドレンジが苦しむ理由の一つにたどり着く・・・ドロー呪文から生まれる要求が重いのだ。《夜の囁き》や《骨読み》が弱いカードというわけではないが、ライフの支払いは高くつくのだ。《骨読み》はPauperで最強のドロー呪文かもしれないだけに残念だ。3マナで最大4枚ものカードを見ることが出来て、このコストパフォーマンスを超えるのは難しい。しかし多くのアグレッシブなデッキがメタゲーム上で目立つ活躍をしている以上、《骨読み》のようなカードを使うなら代償として《清純のタリスマン》のような標準以下の弱いライフゲインを使わざるを得ないのだ。《孤独な宣教師》と組み合わせても良いが、このカードは戦場に出た時の能力を何度も使いまわせるデッキでこそ輝くカードだ。《ムラーサの胎動》も可能だが、《熟考漂い》と組み合わせた時が一番強い。結局《骨読み》は居場所が無いカードという事になる。
デッキに戻ろう。僕のデッキは序盤戦で離されないために《強迫》や《頭の混乱》に頼っている。ラクドスミッドレンジはバーンのようなデッキに追いつかないこともある(ライフの支払いが積み重なっていく)が、対戦相手の手札からキーカードを引っこ抜けば戦場を安定させるために必要な時間を稼ぐことが出来る。《頭の混乱》は《強迫》の倍のコストがかかるが、クリーチャーを落とせるためPauperではずっと強いカードだ。《強迫》は《思考囲い》ではない;《コジレックの審問》でもないのだ。結果として、相手のゲームプランを崩すためのパートナーが必要なのだ。
こうして、このデッキの2つ目の短所にたどり着く。《強迫》は死に札と入れ替わって時間を稼いでくれる適切なサイドボードカードだ。しかしメインデッキでは、多くの場合死に札となる。たとえ呪文を落としたとしても現実には何の影響を与えていないかもしれない。Pauperでは《噴出》や《熟考漂い》、先ほど紹介した統治者クリーチャーで1枚の《強迫》によるダメージを取り返すことが可能だ。《記憶の壁》に頼るデッキも多々あり、《強迫》など鼻で笑うだけだろう。もちろんこのデッキも墓地対策でケアすることは出来るが、《骨読み》《清純のタリスマン》パッケージと同じ問題を抱えることになる。デッキのスロットは貴重で、これらのミッドレンジデッキは単純な仕事をこなすために複数のカードスロットを消費する必要が出てくるのだ。これは勝利への道ではない。
ミッドレンジデッキとは何か?厳密に言えば、アグレッシブな戦術とコントロールの間のどこかに存在するデッキだ。バランスの取れたメタゲームでは、ミッドレンジデッキはビートダウンデッキよりもわずかに遅く大きなデッキを目指し、コントロールに対しては低マナ域で勝負を挑む。最高のミッドレンジデッキは価値を生み出しつつも戦闘で無駄にならないクリーチャーで詰まっている。時にはクリーチャーはどちらか一方の役割のみに傾いていることもある・・・例えば《タルモゴイフ》のように・・・しかしそれらのクリーチャーも何かはする。ラクドスミッドレンジのクリーチャーは力不足で、《グルマグのアンコウ》以外は攻撃で打点を稼げない。しかしそれはPauperのミッドレンジで一番の問題ではない。
ミッドレンジデッキは他のデッキの中間に存在する、そしてその隙間を橋渡しすることが出来れば機能するのだ。Pauperにおける谷間はとても幅が広く、どちらの側にも対応できるように回答を適切に選ぶのは困難だ。《秘密を掘り下げる者》と《ディンローヴァの恐怖》を両方対処できる《流刑への道》は無い。もちろん《終止》は存在する(そして素晴らしい!)が、2マナというのはこういう時にずっと大きな差になる。Pauperのミッドレンジデッキ、僕のお気に入りのアーキタイプは、間の橋渡しをする。問題は、その橋の両端がどちらの岸にもたどり着くことが出来ず、自重で崩れてしまっている事だ。
もう一度ボロス統治者を見てみよう。このデッキは最初の数ターンを戦場を構築したりカードを見ることに費やせる。戦場の展開で遅れることもあるが、そのつまづきは軽い火力で巻き返せるから無視できるのだ。ボロス統治者は単体でも妥当な脅威として機能するクリーチャーを採用している。《きらめく鷹》と《コーの空漁師》はいくらかのダメージを与えられる。それが上手くいかなくても、火力呪文を対戦相手に叩きつけたり、《金切るときの声》で勝つ道筋を探ることも出来る。ボロス統治者は穴を埋めるためのプランを持っているため素晴らしいミッドレンジデッキだ。
黒に欠けるものは何か?回答は範囲が狭く、脅威は水準以下だ。他の色に対する有利な点は手札破壊と墓地からの再利用だ、しかしどちらもPauperのメタゲームでは簡単に打ち消されてしまう。僕の好きなデッキはなぜ弱かったのか?それは実際にはデッキではなく、僕がプレイしたかったカードの束だからだ。Patrick Chapinはかつて、「競技マジックで最優先の指針は、絶対に他の何かの劣化版をプレイしない事だ」と言った。そして僕は、まさにそれをやってしまったんだ。
次のステップは何か?僕にとっては、それは僕がプレイしたいデッキをよく見て、僕が何をやりたいか理解する事になる。それから、単に違うデッキをプレイするのではなく、間違いなく違うデッキでなおかつ本当に強いデッキをプレイする事だ。
(翻訳ここまで)
ミッドレンジは他のデッキ以上に、安定性や汎用性、それを生み出す総合的なカードパワーやデッキパワーを問われます。ご利用は計画的に。