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【翻訳】なぜスタンダードで禁止が出続けるのか!?(後編)

      2018/01/26

Brian Braun-Duinによる記事の後半部分です。ここではデザインの問題で終わらない、スタンダードの構造的な性質に切り込んでいます。前編はこちらから。(1/26 最後のコメント少し補足しました。)

(原文)

Five Reasons Why Standard Bans Keep Happening(TCGPLAYER)

(翻訳)

原因3:我々がスタンダードを攻略するのが上手くなった

今のマジックは私が始めた10年前とはまるで違う。共同体として、我々はいろいろな意味で進化してきた、それによってスタンダードは我々の攻略による圧力に耐えられなくなってきたのだ。スタンダードはモダンやレガシーと違ってカードプールが広くない、故に問題に対する回答はずっと少なく、環境を攻略するために時解明するべき不確定の要素もずっと少ない。モダンのようなフォーマットは継続して攻略に抵抗してきたが、スタンダードはそこまで強固ではない。

一つに、我々はデッキ構築の理論で大幅に進化している。最近のデッキはかつてよりもずっと簡潔で明瞭なものになった。我々は必要でないカードを削って本当に必須のカードだけを間違いなく入れるのが上手くなった。今のサイドボードは単純に個別のマッチアップに強いカードの15枚のコレクションではなく、あらゆるマッチアップに対して特別に調整した入れるべきカードとサイドアウトするカードの適切な枚数、さらに先手と後手で異なるプランを含むのだ。

上手いデッキビルダーがマジックオンラインのようなテスト場所と組み合わさると、環境の解明を加速する。MOは何千人ものプレイヤーが同時に参加してデッキの調整と改良を繰り返す場所を提供している。誰かがマジックオンラインのリーグで5-0を記録した。別の誰かがそのリストを見て、少し修正して、また5-0した。別の誰かがその修正されたリストを見て、さらに修正して5-0をする。繰り返して、そのたびに徐々に理想的な構築に近づいていくんだ。その流れに加えて、我々がデッキの問題点を解決するための構築の技術が向上していることを考えると、フォーマットの攻略が加速していることは明らかになるだろう。

マジックオンラインでリーグを再開したことが、適切なテストをプレイできる量を大きく変えた。リーグが出来る前は、スタンダードは4ラウンドのデイリーイベントが1日に数回あった、しかしラウンドは全てのプレイヤーが前のラウンドを終わらせるまで開始できず、そのためデイリーイベントを終わらせるのに4時間はかかっていた。4試合をするために4時間かかる。これは効率的なテストとは言えない。デイリーイベント以外では2人構築もプレイする事が出来たが、さらにテストには適していなかった、なぜならほとんどが低予算のデッキや構築ばかりだったからだ。ゴールド2人構築があった時期もあるが、私にゴールド構築の話はさせないでくれ。あれがマジックの黄金の時代だという人もいるが、話が脱線してしまう。現実的に、リーグが無かったころはマジックオンラインで適切なテストは1日に僅かしか出来なかった。

しかしこれはもはや過去の話だ。今なら次々とマッチを繰り返すことが出来るし、競技リーグなら大抵は良いデッキが相手だ。4時間で4回のマッチではなく、今ならもっと良いデッキとプレイヤー相手に同じ時間で15マッチは出来るのだ。これがデッキを改良するプロセスを大幅に改善しているわけだ。かつては環境を解明するのに4か月はかかり、その頃には新しいセットが出てきていた、しかし今なら5週間もあれば十分かもしれない。

過去のフォーマットを振り返ると、《思案》とフェッチランドが同じスタンダード環境に共存していたのに《思案》がほとんど使われなかったことを考えずにはいられない。後知恵ではあるが、あのカードを使っていなかったのが正しかったとはとても想像できない。今であれば、それを見逃していたことも想像できないだろう。最終的に誰かが《思案》を4枚使う構築を見つけてリーグに5-0して、そしてサイクルが新しく始まったはずだ。

今のようにテストを繰り返して最高のデッキの最良なバージョンまで環境の不純物を取り除いていくことが出来ていたら、過去の人気があった環境の多くはそこまで愛されることは無かったかもしれない。我々が良い時代だったと盲信している環境にも、実は環境を荒らすモンスターデッキが潜んでいて、しかし幸運にも我々はそれを発見せず、気づかないまま幸せでいられただけである可能性もあるのだ。

マジックオンラインのリーグが我々の環境を進めて解明する速度を大幅に加速している他にも、我々は以前と違ってマジックに対する意識も異なっている。私がマジックを始めた頃は、コンテンツがずっと少なく、大会で選択するデッキは今よりずっと均一化されなかった。現在は、情報がより素早く効率的に拡散し、プレイヤーは以前よりも大会に出る時にベストデッキの一番良いリストをコピーする傾向になってきている。たとえ当時のデッキが禁止に値するぐらい強かったとしても、必ずしも必要ではなかった、なぜなら十分な人数の人々がベストデッキをコピーするよりも手作りのデッキを選んでいたからだ。これは年を追うごとに一般的な考え方ではなくなっているみたいだ。

明確にしておくと、これは不満を言っているわけではない。みんな好きなようにマジックをプレイして良いのだ。

しかしながら、これらの事をすべて総合すると、我々は段々とスタンダードを解明するのが上手くなっている。これは間違いなく9枚のカードが禁止されるに至った唯一の要因ではない、しかし要因の一つで、そしてこれは今後変わることは無い。たとえウィザーズがどれだけ将来のセットを上手くデザインしたとしても、一部は我々の攻略に耐えられず、禁止で修正する必要が出てくるかもしれない。

原因4:禁止に対する方針が変わった

ウィザーズはかつて禁止をデリケートに扱っていた。本当に必要な時以外は禁止を出さないようにしていたんだ。《精神を刻むもの、ジェイス》と《石鍛冶の神秘家》は言語道断なほどの長い期間に渡ってスタンダードを完全に殺していた、そしてウィザーズがようやく、渋々それらのカードを禁止する頃には大会参加人数が激減していた。

今、《反射魔導士》、《暴れ回るフェロキドン》、《ラムナプの遺跡》が禁止されている光景を我々は見ている。これらのカードのパワーレベルは、過去の15年にスタンダードで禁止されたカードと比べたら笑ってしまうようなものだ。過度に厳密だった禁止の条件は無くなってしまっているらしい。代わりに、ウィザーズはスタンダードのカードをモダンと同じようなやり方で禁止するようになっている。これは理に適っている。モダンは大会参加者数に基づけば最も継続的に人気がある愛された環境だ。

モダンでは、ウィザーズは問題が起こったら大会の参加人数に継続的な悪影響を与える前に素早くカードを禁止している。《欠片の双子》や《緑の太陽の頂点》が環境の多様性のためと称して禁止されたように、ウィザーズは強すぎるカードだけを禁止しているわけではない。《暴れ回るフェロキドン》の禁止もこの流れに続いている。

フェロキドンはパワーレベルという観点ではまるで禁止に値しない、しかしアーキタイプの多様性を潰してしまう、これはウィザーズが今後禁止リストをどう扱うかの指針となるだろう。今までは、こんなカードを禁止することを考えることすら狂気の沙汰だった。しかし今、2018年に、何でも起こる可能性があるわけ。イカれてると思うか?今は。2018年だ。

私は直近の10年間も、ウィザーズが今と似たような戦術を採っていたら、もっと禁止が起こっていたと思う。《苦花》、《聖トラフトの霊》、《集合した中隊》は生き残らなかっただろう。

原因5:2年間のローテーション

昨年、ウィザーズはスタンダードのローテーションを、2年おきにセットがスタン落ちする方式から18か月ごとに変更すると決定した。それから、大量の否定的なフィードバックを受けて、ウィザーズはもとの2年間の方式に戻した、それも自ら開発した18か月のシステムを試す事すらせずにだ。18か月ごとにスタンダードのローテーションを行う方式はカードを禁止する必要性を減らす利点もある。もしカードや戦術が支配的になりすぎても、すぐにローテーション落ちして、禁止する必要性が無くなり、そうやってローテーションが自然と問題に対処するようになっていた。しかし、2年間のローテーションでは、その強すぎる何かを存続させるには残された期間が長くなりすぎて、禁止の必要が出てくる。

スタンダードのセットを2年間残すことは、スタンダードの禁止を生み出すリスクを生み出す急所になっているのかもしれない。問題のあるカードがフォーマットに残り続けて継続した悪影響を与えるには十分な時間がある。モダンやレガシーと違って、カードプールが狭くて弱いためにプレイヤーは多くの場合に問題のあるカードや戦術に対抗する手段が無くなる程度には、ローテーションの期間が短い。

前回18か月のローテーションを打ち出したときに受けた反発を考えたら、今後ウィザーズが短い期間のローテーションを試みるとは考えにくい。しかし、将来的に3年間のスタンダードのような何かをやる事は、未知の領域であるため間違いなく有りうる。そのようなフォーマットならば、環境が解明されつくす事を避けられて、禁止の必要性や頻度が小さくなる十分な大きさを持つ可能性はあるだろう。

Brian Braun-Duin

(翻訳ここまで)

個人的な思い出を言えば、むしろ今の感覚で《聖トラフトの霊》は禁止して欲しかったですね(苦笑)。ミラディンの傷跡~イニストラード期の青白Delver-Blade1強時代は、他の色が好きなプレイヤーには不遇の時代でしたから。たぶん《集合した中隊》や《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》あたりも同じような気持ちの人は多いかも?

とは言え、全体的にスペルが強化傾向にあるこれからのスタンダードに期待しましょう!

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