ゲートウォッチはなぜ敗北したのか?ストーリーとカードから考える
2017/08/13
『ゲートウォッチの誓い』で誕生したプレインズウォーカーでチームを組むというゲートウォッチの活躍は、『破滅の刻』でニコルボーラスに敗北し、全員プレインズウォークで敗走するという衝撃的な結末と大歓迎をもって終わった。
公式はストーリーの中心をゲートウォッチに据えるという展開を失敗として、今後はゲートウォッチの出番を抑えることを明言しました。なぜこのような結果になったのか?なぜゲートウォッチがマジックの楽しさ、特にスタンダードの楽しさに悪影響を与えたのか?個人的に考えたことをまとめてみます。あくまで一個人プレイヤーの体感という事でよろしくお願いします。
ストーリーの過度な連続性をもたらした
公式や多くの批判に書かれているように、ゲートウォッチがストーリーを引っ張っていく同じような展開でプレイヤーが飽きるという指摘がありました。ゲートウォッチも最初は人気があったのですが、出番が多過ぎたことで不満が溜まっています。
しかし単に出番が多すぎたりプレイヤーが飽きるだけでは問題のほんの一部でしかありません。ゲートウォッチの存在は新規プレイヤーを弾いている可能性があるのです。
まず、ゲートウォッチに着目したことで、『戦乱のゼンディカー』から『破滅の刻』までのセットはある種「ゲートウォッチ・サーガ」という状態になっていました。
つまり、各ブロック間のストーリーのつながりが濃く、1つ1つのブロックがストーリー上独立していません。
例えばアモンケットなら「アモンケットに潜んでいるらしいニコルボーラスを倒しにゲートウォッチが現れた」という所からストーリーが始まりますが、直前までの流れや過去のキャラクターを把握していないと結構わけわからないと思います。
これではウィザーズが重視する新規プレイヤーと絶望的に相性が悪い。
ついでに言うとあまりストーリーを詳しく追いかけてない人にとっても、手っ取り早く理解できない領域があるというのは居心地の悪いものです。
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例えば管理人はワンピースが好きでしたが、社会人になり仕事に追われマジックを始めてからだんだん読まなくなりました。一度読むのを辞めると途中からストーリーに追いつくのが面倒になります。
結果として、ストーリーがブロック間に長く続きすぎたことでストーリーを楽しめないプレイヤーが出始める。これがゲートウォッチのストーリー面の弊害です。
プレインズウォーカーを強くし過ぎた
(↑もう見るのも嫌な人、いるんじゃない?)
ストーリーで重要なキャラクターを意識的に強いカードにするという必要性は確かにあります。
主人公に限ってあまりにも弱すぎるという状態はマジックでは割とお約束に近いネタですが、これに反省したとたん《約束された終末、エムラクール》が禁止になったりと行き過ぎた結果になりました。
しかし、同時に無視できないマジックの問題はプレインズウォーカーというシステムです。・・・いや、あえて賛否両論を覚悟で言うなら、
プレインズウォーカーはカードとして最悪に楽しくない。
特に《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》クラスになると打ち消されず戦場に出た瞬間にカードアドバンテージが確定し、その後も対処できなかったら雪だるま式に差がついていく。使われたプレイヤーは負け確定じゃないけれど、投了しない限り相手だけ毎ターン2枚引く一方的に不利なゲームを延々と続けなければいけない。これが本当に苦痛で嫌になります。
これが例えばコンボや特殊なアンフェアデッキで即死だったら「こんな面白いコンボやシナジーがあるのか!」と負けても楽しめるのですが、プレインズウォーカーはカード1枚で延々やられるからそんな感動も一切ありません。
そして自分はよく使う側にも回りますが、勝っても勝った感じがしない。コンボを決めたわけでもなく、適切なリソース管理やプレイングで勝った実感が持てません。ただ強いプレインズウォーカーを最速で引いて通ったから勝った。そんな気持ちになってしまうのです。
何より、強すぎる上に対応の幅も広いプレインズウォーカーが一度印刷されると、ただ存在するだけで同じコストのカードをほとんど駆逐してしまう。つまり環境によってはデッキビルドの楽しさも奪ってしまっています。
プレインズウォーカーはユーザーエクスペリエンスが非常に悪い、少なくともそんな性質が一部あるのです。ゲートウォッチをアピールするために強いプレインズウォーカーを次々印刷していった結果として、プレインズウォーカーの危険な部分が表面化しました。そして、そのままゲートウォッチが楽しくないスタンダードの象徴という見方をされたのではないでしょうか。
次の勝利のために
最後に、ストーリー、カード両面から、解決するための個人的な考えも少しばかり提案して終わります。
まずストーリー面から。これは既に行われようとしていることですが、『オデッセイブロック』~『タルキールブロック』までの一話完結に戻す。そして連続したストーリーは長くても1年程度にする。単純に前の状態に戻せば、新規プレイヤーや復帰勢がストーリー面からも気軽にマジックに参加していけます。実際自分も『ラヴニカへの回帰』はむしろストーリーの方がメインだったというレベルです。
そして、プレインズウォーカーというシステムを大幅に見直す事。と言ってもいきなり無くすのは無理だと思いますから、カードレベルを大幅に低下させるべきでしょう。
ちなみに具体的な基準はあります。前々からこのブログやあちこちでやんわりと言ってる管理人の持論ですが、以下の条件をすべて満たすカードは今すぐスタンダードで禁止して二度と刷るべきではない。
条件1:4マナ以下である
条件2:+または±0でカードアドバンテージ(除去、トークン含む)を生み出す
この2つの条件の両方に該当するプレインズウォーカーはだいたい壊れです。
《精神を刻むもの、ジェイス》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《反逆の先導者、チャンドラ》は当然該当します。スタンダードではそこまで活躍していませんが《最後の望み、リリアナ》も同様に特定のクリーチャーを否定してしまうので危険。
また《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》も、トークンは0/1と微妙なところですが過去にはギデオンと組んで緑白トークンという実質プレインズウォーカーグッドスタッフを生み出し、バントカンパニーと並んで環境を緑白で染め上げました。
上記のような条件を満たすカード(ちなみにプレインズウォーカーに限らずクリーチャー以外のパーマネントも含みます)はどこかで環境をゆがめる可能性が極端に高いのです。
強いて許容範囲を上げるなら、《ドムリ・ラーデ》や《ボーラスの工作員、テゼレット》のようなデッキ全体の構築を大幅に制限するものだけでしょう。それ以外の、手軽にアドバンテージを稼げる軽いパーマネントは十中八九スタンダードをダメにします。
(追記)
コメントで《歓楽者、ゼナゴス》などの指摘を受けてるうちに気づきましたが、多色であれば多少強すぎてもそこまで大きな影響は与えないと思われます。使うことが出来るデッキが大きく制限されますから。
最後に
ここまで読んでくれたあなたへ、長々とお付き合いいただきありがとうございました。自分なりに、マジックがもっともっと楽しいゲームになって欲しい、そのための考えを投げる場としてこの場を使ってみました。
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