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無名の黒好きプレイヤーによるMTG記事の翻訳中心ブログです。ほとんどモダン。

【翻訳】海外も注目するフロンティアの良い所、悪い所、その未来

      2016/12/29

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スタンダードとモダンの間を埋める新しいフォーマットとして日本の晴れる屋がスタートさせたフロンティアが、徐々に海外でも広まって注目されています。特にMTG Goldfishはデッキのデータベースにフロンティアをサポートするようになりました。記事も少しずつ出て来ていて、EDHのような公式フォーマットにまで昇華するか注目されていることが分かります。そんな記事の一つを紹介。世界はこの新しいフォーマットをどう見ているのでしょうか?

(一部意訳や省略もしています。原文はこちら)
Frontier - the Good, the Bad and the Future by Corbin Hosler

(翻訳)

この数週間マジックの話題が集まっている。スタンダードは環境が変わるまで時間の問題だ。モダンはいったんスポットライトから外れている。霊気紛争のプレビューもまだ本格的には始まっていないから、コミュニティは話題を欲しがっていた。

そこにフロンティアが現れた。ファンが生み出した新しいフォーマットを知らない君のために、詳しく説明しておこう。

・ローテーションが無いフォーマットである。
・フォーマットはMagic 2015以降、カードの枠が変わってからのセットなので、すぐにどれがリーガルか分かるはずだ。
・Magic 2015、タルキールブロック、マジックオリジン、戦乱のゼンディカーブロック、イニストラードを覆う影ブロック、カラデシュブロックが使用可能。新しいセットが出たらフロンティアに追加される。
・日本の大型ストア、晴れる屋が最初にフォーマットを提案した。彼らは毎週フロンティアのトーナメントを開催し、カナダの大手ショップで大会も開いているFace to Face Gamesも最近トーナメントに挑戦し、38人を動員した。

いろいろ話すことはあるだろうが、私のここでの目的は、フォーマットがもたらすメリットと、人々が支持する理由を検討する事だ。私はこのフォーマットに熟練していないから、大枠の話をする。

プレイヤーが生み出したフォーマットの歴史

もちろん統率者から話さなければならない。ファンが生み出したフォーマットで、当初はエルダードラゴンハイランダー(EDH)と呼ばれていたが、今やマジックコミュニティの常連フォーマットで、しかもウィザーズが正式にサポートして毎年セットを作っている。

プレイヤーが生み出したフォーマットと言えば、統率者は一番分かりやすい大成功だ、しかしそれだけじゃない。時と共に忘れられていったが、私が大好きだったのはオーバーエクステンデッドというフォーマットだ。

モダンが存在する前、エクステンデッドがった。7年間でローテーションするフォーマットで、プレイできてた頃は楽しかった。もちろん、楽しくない時もあった。そしてどれだけ楽しくても、プレイヤーはただ、気にも留めなかった。PTQのフォーマットになっている3か月間だけプレイされて、1年間のそれ以外の間は忘れ去られていた。結局、レガシーの方が良かったのだ。

しかし、レガシーには今でも変わらない大問題があった・・・再録禁止リストだ。デュアルランドは軽く100ドルを超えて、これだけマジックが成長しているのに、手が出せなくなっている。だから、再録禁止リストの問題を解決する新しいフォーマットをみんな求めていた。

Gavin Verhey、今やウィザーズのデザイナーだが、当時はプレイヤーでライターだった彼が、再録禁止リストの問題と、エクステンデッドの不人気を同時に解決しようと挑んだ。彼はかつて、その独創的な記事にこう書いていた。(原文ではリンク先が参照されていますが、データが消えています。)

エクステンデデッドは失敗だ。

シンプルにそういう事だ。僅かな人しか楽しんでいない。イベントでプレイすることを強制されないと誰もプレイしない、そしてカードを集める理由も少ない。エクステンデッドが小さくマジックがもっと違うゲームで会った1.5年くらい前なら機能していた。しかしもはやエクステンデッドと他全てのフォーマットの関心の差は今分かっている情報から明らかだ。無理やり引き止めながらここまで来た。

もう、お別れの時だ。

彼が提案したのがオーバーエクステンデッドだった。このフォーマットはインベイジョンブロックで、ローテーションが無い。Gavinは自ら考案したフォーマットを広めるためにトーナメントをオンラインで運営し、自分で賞品も出した。

その頃、ウィザーズは2011コミュニティカップで「モダン」をテストした。これはもちろん、ウィザーズのモダン制定に繋がり、Gavinがたった一人でマジックコミュニティに挑んだ冒険は、君がオーバーエクステンデッドを知らなくてもマジックの歴史の残る大成功として残っている。

他にもプレイヤーが作ったフォーマットがある。カナディアンハイランダー(ライフ20で統率者が無く、100枚のシングルトンで1対1で戦う)、Pauper、Cubeから、Type 4(プレイヤーは常時無限マナ、ただし1ターンに1回しか呪文を唱えられない)、タイニーリーダーズ、Peasant(レア禁止、アンコモン5枚まで)、マジックをよりよくするためにプレイヤーが活動をして来た。ここまでの歴史を見れば、プレイヤーが作り出した動きがウィザーズに正式にサポートされることもあると分かるだろう。

そして、フロンティアだ。

良い点

最新フォーマットのフロンティアには良い所がある。モダンのぶっ壊れたところや楽しくない部分を避けて快適にプレイできるからこそ、フロンティアに人が集まっているのだ。

手を出しやすい

正直に言おう、これだ。フロンティアはモダンの良い所を取り入れつつ、最大の問題を克服しようとしている。モダンのトップデッキは、例えば比較的安いドレッジ、トロン、呪禁、マーフォークでも500ドル以上はする。もっと高いデッキだと感染、バントエルドラージ、アブザンカンパニー、ジェスカイやグリクシスコントロールだと1000ドルで、ジャンドやアブザンのような《タルモゴイフ》デッキになるともっとすごい値段になる。

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これらは並みのマジックプレイヤーでは手が出せない。もちろん、モダンはスタンダードと比べたら長期的には安い投資だ。しかし、それでも「タルキール龍紀伝」からマジックを始めたプレイヤーが友達とモダンの大会に出ることは無い。これだけ高いと言う事は、プレイヤーは組んだデッキをずっと使い続けることだ、禁止されない事を祈りながら。同時にプレイヤーは低予算デッキを組みたがるようになり、これでは店側の利益にならない上に、プレイヤーがフォーマットの頂点を争うことが出来ない事を意味し、プレイヤーがモダンに力を注ぐ前の壁になっているのだ。

モダンを愛しコンテンツを作っている身としてはモダンの行く末も気になる。しかし今日はフロンティアの話をしている。

一番高いデッキは4色コントロール、おそらくダークジェスカイと呼ばれていたものだ。フェッチランド、《ヴリンの神童、ジェイス》で400ドルはかかる。その次に《先祖の結集》が続く。これは決して安くはない、しかしモダンと比べたら圧倒的に安く組める。メタにある他のデッキ、人間、エルフ、アタルカレッド、バントエルドラージ、グリクシス《アーティファクトの魂込め》は全部200ドル以下だ。これは普通のスタンダードデッキと変わらず、デッキによってはもっと安い。

相互作用のマジック

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Q:フロンティアをプレイする方へ、このフォーマットの一番素晴らしい所は?
A:どんなスタイルでもプレイ出来て、同時に大抵は相互作用があるゲームになる(感染vsむかつきで12ターンでマッチが終わるようなことは無い)

フロンティアは完全に現代のデザイン哲学で作られたカードだけで組まれるから、他のフォーマットよりも相互作用が無い。感染3ターンキルは無い、君が何をやっても無視するストームは無い、2~3ターンには君が何も唱えられなくする《血染めの月》も無い、アグロならゲームが終わる《罠の橋》も無い、そして《窒息》や《沸騰》みたいな今だったら絶対に印刷されないようなカードも無い。

代わりに、プレイヤーはお互いにマジックをやる事が強制される。これは人にとって感じ方は違うが、フロンティアは他のフォーマットより不健全なカードは無いと言う事だ。

お気に入りのカードをもう一度使うことが出来る。

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Q:フロンティアをプレイする方へ、このフォーマットの一番素晴らしい所は?
A:《奔流の機械巨人》からの《時を超えた探索》!

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自分ではやったことないが、これを見たらやりたくなったよ。《宝船の巡航》と《時を超えた探索》を使えることは多くのプレイヤーを引き付けている。

しかし、単純に禁止されたカードだけじゃない。みんなが愛して来たアタルカレッド、《カマキリの乗り手》、《パンハモニコン》、《血の暴君、シディシ》、《ゴブリンの熟練扇動者》のコレクションを活用したいのだ。6か月ごとにスタンダードのローテーションが行われるというのはカードが使えなくなるのが速すぎるということで、変更が巻き戻されたとしても、既に使えなくなったカードはあまり変わらない。

そしてみんな大好きなフロンティアのあのカードを忘れてはいけない。

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Q:プロとしてフロンティアに関心があるとして、トップデッキ/結果/その他から学ぶことは何ですか?
A:見る限りフロンティアは《包囲サイ》を絶滅から守るために存在するようだ。

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デッキを研究する機会がある

マジックプレイヤーの人生で一番楽しいことの一つは新しい何かを創り出すことだ。フロンティアはこれまで組み合わせられなかったカードを組み合わせることが出来る。機械巨人からの《時を超えた探索》は氷山の一角に過ぎない。《アブザンの鷹匠》から《サリアの副官》、《ゴブリンの熟練扇動者》から《無謀な奇襲隊》もほんの一部だ。

これらを発見することはデッキビルダーにとって一番のハイライトだ。少ないカードプールから始まるという事は、全体的なパワーレベルが低く実験の余地があると言う事だ。

悪い点

これだけ良い事もあるが、フロンティアには課題があり、そこには内在する課題も時間とともに解決する課題もある。

バランスの悪いマナ

今フロンティアでリーガルなセットで使える土地サイクルはこんな感じだ。

Magic 2015:対抗色ペインランド
タルキールブロック:友好色フェッチランド、トライランド
戦乱のゼンディカーブロック:友好色バトルランド、敵対色ミシュラン
イニストラードを覆う影ブロック:友好色シャドウランド
カラデシュブロック:敵対色ファストランド

これはタルキール~ゼンディカーブロックにかけて起こった問題を繰り返す。フェッチランドとバトルランドの相互作用で、3色デッキのマナベースは自然に4色を可能にする。これがスタンダードがダークジェスカイ、ブルーアブザン、ブルーマルドゥのような「4色グッドスタッフ」だらけになった理由だ。これは伝統的なマナの概念を破壊し、スタンダードが4色デッキ(とアタルカレッド)だらけになって大半のプレイヤーが楽しめなかった要因だ。『タルキール覇王譚』ブロックのカードパワーがフォーマットの他のセットよりも高かったこともあり、我々はそのスタンダードと同じアーキタイプで定義されている。

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しかし問題はもっと深い。このサイクルは平等に作られてはいないのだ。モダンが生まれた時、同じように不均一なマナだったが、《聖なる鋳造所》のような基本的なショックランドはあったから、誰にでもスタート地点はあった。

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フロンティアは、今のところ敵対色が優遇されている。例えばアグロの白青デッキを組もうとする。出来る事には出来るが、マナベースは、《大草原の川》は3ターン目まで弱いから《溢れかえる岸辺》と《港町》だけになる、そして《港町》の信頼度は低い。

一方、赤白のアグロを組むとしよう。《戦場の鍛冶場》、《感動的な眺望所》は最初の3ターンなら遥かに安定する。さらに《鋭い突端》のようなクリーチャーランドも使える。

言い換えれば、マナが完璧でない事は根本的な問題とまではいわないが、一部のアーキタイプが可能で、別のアーキタイプはマナベースのサイクルが半分しかないために組めないというのは懸念するべき点だ。ミッドレンジやコントロールが4色を使わないとお行けなくなっている状況も考えると、環境を特定のデッキに偏らせるようになる。

大事なのは、モダンもこの問題と直面して来たということだ。フロンティアで使えるセットが増えるほどこのバランスが悪い状態は改善される。直すことが出来ないわけではないが、今は問題というだけだ。

カードパワーの集中

この子を覚えているか?

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こいつはスタンダードを恐怖のどん底に陥れた。カードパワーと値段、両方の意味で。ジェイスは最盛期で75ドルにまでなった、そしてフェッチランドもあったせいで、スタンダードの歴史で最も高い環境の一つになってしまった。

そのスタンダードをベースにフロンティアは作られていることを思い出してほしい。2つのトップメタ、4色コントロール/ダークジェスカイと《先祖の結集》、4枚のジェイスと山のようなフェッチランドだ。これがトップメタを占めたせいで、フォーマットの長所を蝕んでしまった。

今なら400ドルでこういうデッキが組めることはリーズナブルだ。しかし、モダンも昔はこんな値段だったことを頭に入れておいてほしい。モダンの不都合な真実は、いくら再録しても需要によって値段が上がり続けるということだ。フォーマットが人気になれば、プレイヤーはカードに金をかけるようになる。

フロンティアが広まり、ウィザーズがグランプリのフォーマットに採用したと想像してほしい。フォーマットにみんながなだれ込んで、カードの値段も上がる。《血染めの月》みたいに4色デッキを咎めるカードが存在しないから、強いデッキはタルキールブロックのように大量のフェッチランドと《ヴリンの神童、ジェイス》を入れるだろう。今は400ドルのこのデッキがどうなると思う?タルモゴイフ2号の誕生だ。あいつは何度も再録されたのに未だ100ドル以上だ。だからと言ってフロンティアの人気が衰えてない事はモダンが既に証明しているが、フロンティアが売り出していた「手を出しやすい」魅力は損なう。

嫌なアイツらとまた相手しないといけない

《包囲サイ》が大好きだった人が1人いたら、そこに1人か2人はずっとサイばかり見るのが嫌なプレイヤーがいる。君たちは《先祖の結集》や《集合した中隊》の存在したスタンダードでどんな気持ちだった?

うん、まあイマイチだろう。ウィザーズがエクステンデッドを殺してしまう前に行った変更は、7年のローテーションから4年に変更した事だ。スタンダードで使えたカードを延命できるようにしたかったようだ、ちょうどフロンティアと同じように。しかし現実は、プレイヤーはあと2年間も《血編み髪のエルフ》や《霧縛りの徒党》を相手にするのが何よりも嫌だったってことで、結果フォーマットから離れてしまった。

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Q:フロンティアをプレイする方へ、このフォーマットの一番悪い所は?
A:ミッドレンジ連中が4色戦術に支配されている事、新しいスタンダードのセットがタルキール覇王譚を超えるカードパワーを提供する可能性が薄い事

これも、セットが増えれば改善されていく問題である。

未来に向けて

さて、フロンティアは一大ムーブメントになるのか、それとも次のタイニーリーダーズなのか?

分からない。モダンに内在する問題が簡単に解決できないことは理解している。フロンティアはむしろ、問題に挑むよりも問題そのものを消してしまおうというしている。

フロンティアを3つのカテゴリー、「アクセスしやすさ、ゲームプレイ、要望」から見てみると、フロンティアがなぜ輝き、どう改善できるかが分かって来る。

アクセスしやすさについて:フロンティアは《類人猿の指導霊》《窒息》《罠の橋》みたいな昔のデザインのカードを心配する必要は無く、第8版のカードを相手にする必要もない。確かにジェイスやフェッチランドのような一部のカードは高い、しかし印刷されている枚数も多いからモダンのように供給不足で値段が高くはならず、場当たり的にカードを買う事も可能だ。

ゲームプレイについて:今のところ、このフォーマットはまだまだこれからだ。環境はスタンダードのデッキを焼きなおしただけの4色デッキに支配され、マナとパワーレベルは不安定、強い墓地対策が無く、《祖先の結集》以外のコンボデッキが無い。フォーマットは生まれたばかりだから、これが正しい認識かどうかは分からないし、これらの問題はセットが増えたら自然と解消する。

要望について:プレイヤーからの「要望」は間違いなくある。フロンティアのバズは間違いなく、あれだけモダンが人気でも、大きなプレイヤー層を取り切れていない、特に3年4年前にマジックを始めて、昔は適当にドラフトのパックから手に入った《タルモゴイフ》、《沸騰する小湖》、《瞬唱の魔道士》を持っていないプレイヤー層だ。

ウィザーズから見て難しいと思うが、サポートを得られるかどうかは大きい。モダンは大成功だった。プレイヤーに愛され、イベントの参加人数は増えている。毎年モダンの再録セットがバカ売れする。スタンダードはむしろ、6か月のローテーションを戻した後も苦戦して、スタンダードショウダウン等でプレイヤーを呼び戻そうと必死だ。

フロンティアをサポートすれば、ウィザーズにどう影響するだろうか?モダンが生まれた理由は、再録禁止リストに《邪魔》されないエターナルフォーマットを創る事だった。プレイヤーがレガシーをプレイすることは構わなかったが、再録禁止リストのせいで成長の余地が限られていたのだ。《タルモゴイフ》はモダンにとっての《Underground Sea》だが、毎年神話レアで再録することが出来る。そういう意味ではモダンはウィザーズの思い通りに動いている。

君がウィザーズの会議室に座って、経営的なリソースをこのフォーマットに投資するかを議論しているなら、答えるべき質問はこうだ:そのフォーマットは何の問題を解決するか?彼らにとって、フロンティアが何かを解決するかが見えにくい一方、プレイヤーを分散させるというリスクが存在する。もしショップに4人のレガシー勢、4人のモダン勢、4人のフロンティア勢、4人のスタンダード勢しかいないなら、大会は成立しない。

これはフロンティアが存在できないと言っているわけではない。しかし、もしフロンティアをただのインターネットの盛り上がりからFNMのフォーマットに昇格させる気があるなら、Gavin Verheyのようなことをしないといけない。フォーマットを育て、新規プレイヤーを受け入れ、トーナメントを整備する。簡単な仕事ではないが、かつてホテルでEDHをプレイしていたジャッジ達も、EDHが今のようになるとは簡単に思わなかっただろう。

読んでくれてありがとう。

(翻訳ここまで)

思ったより長くなってしまいました。個人的には辛うじてモダンの資産の一部があるので大抵のモダンデッキはあと一声かけたら組めるのですが、そうでないプレイヤーも多いはず。逆にタルキール前後のカードをちょうど逃してしまっていて、フロンティアは組み辛いです。皆さんはどうですか?

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